きゅうりから森の香りまで 着ている洋服、雰囲気、話し方。そのどれをとっても、いわゆる生産者というイメージからかけ離れているロブさん。もともとは種苗業界出身で、アジア地域でのプロモーションを担当していたという。約20年の間に訪れた国は70カ国以上。今でも年の半分以上を海外での製品プロモーションや新製品の開発に費やす行動派だ。 「明日ブータンに行けと言われたら行きますよ(笑)。今まで本当に多くの国に行きました。はじめて日本に行ったのは83年のこと。滞在日数はのべ1000日以上になります。美味しいものから面白いものまで、いろいろな食べ物を口にしましたね」。 何気ない会話のなかで「ショクイク」という日本語が飛び出すなど、食、そして異文化に対する造詣は深い。保守的な考え方が主流を占めるオランダの生産者のなかにあって、発芽野菜という新しい方向性を見出したのも、数え切れない旅からの啓示があったからと語る。 「この新芽、にんにくの味がするでしょう。でも匂いはしない。韓国で見つけたものです。これはどう?この味、なんだと思う?そうそう、生牡蠣の味。面白いでしょう。これはしそ味。日本人には珍しくはありませんよね。これは?森の中で、落ち葉をかき分けたときの香りがしない?」。 ますます高まる安全な食への意識 次から次へと手渡される発芽野菜。日本でも最近見かけるようになったブロッコリーをはじめ、きゅうり、わさび、りんご味から、森 の香りがするものまで。彼がコレクション=作品と呼ぶ製品類は、その名前を含め、とてもユニークだ。そして、作品を紹介しているロブさんの目は、子どもの自慢話をするときの親のそれと似ている。 「私が変わっていることは認めます(笑)。これは哲学に近いものなのかもしれません。まずは私が気に入らなければ先には進まない。常にクリエイティブでいること、それがテーマです。しかし、私が好きなことに専念できるのは、多くの優秀なスタッフに支えられているからということも理解しています」。 旅の途中でひらめいたアイディアを製品という形に具現化、さらに、毎日欠かすことなく供給できる体制を整えること。そこまでの道のりは長く、一人で実現できることではない。 「もうひとつ忘れてはならないのが「安全」です。例えば、アフリカで栽培、管理されたかいわれ大根を食べる気になりますか?私はお奨めしません。良質で、しかも安心して食べることのできる製品は、清潔な生産設備と、しっかりとした管理体制があってはじめて生み出されるものなのです。信頼してくれるシェフたちを裏切ることはできません。そのために、我が社ではとても厳しい検査基準を設けています。幸いなことに、最近は「安全」への意識が一般にも浸透しはじめている。願ってもない状況です」。 オランダの運河がこの10年のうちにどれだけ清潔になったかという話を例に、食べ物の安全について語るロブさん。整然と並んだ水耕栽培のベッド。最新の設備に囲まれた清潔な研究・生産施設からも、その思いが伝わってくる。 「ユーロ高の今、アメリカへの輸出がとても難しくなっています。そのこともあって、最近、現地で生産できる体制を整えました。シェフの期待に応えるためです。実は、日本でも同じことをやりたいと思っています。発芽野菜の普及度が高い日本市場への参入。まるで海に水を運ぶようなものですが(笑)、ぜひチャレンジしたい。私自身やスタッフにとって、とても刺激になると思うからです。東京の、1000人のシェフにイチバン、「ロブがイチバン」と言ってもらうのが夢です」。 1988年の設立以来、ユニークな発芽野菜を世界中のシェフに提供し続けてきたコッパート社。これからは、彼らの「作品」に日本で出会う機会が増えていくのかもしれない。 http://www.koppertcress.com
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